Message from the artist

スウェン博江 ご挨拶

生まれ育った京都の地で、23歳で始めた陶芸。8年目の31歳で、この道で生きてゆこうと決め、34歳でオーストラリアに来てから、はや、55年が経ちました。

新たな場所、異なる土、異なる陶芸にたいする取り組み方をする人々の中、新たに問われた「わたしの陶芸とはなにか」を見つめる日々でした。

来し方を振り返ると長かったようで短い年月。未だに達成感を得られていませんが、陶芸は私の生活そのもの、生きる意味になってきました。私にとって、世間の評価は製作とは無関係。自分の世界、つまり、独りの土俵で己の目指すところを極めようとして、現在も精進の日々です。

若い陶芸家の方たちが、私の製作過程のビデオを見て、何かのヒントを見つけていただけるようでしたら、労を惜しまずに作った意味があります。

このアーカイブが、これからの世代の陶芸家となる人たち、陶芸が好きな人たち、陶芸を研究する人たちのお役にたつと嬉しいです。

このアーカイブを作るにあたり、手伝ってくださった方々、特に助成金を下さったACT政府、NSW政府の文化担当の皆さま、および、いろいろな形でこのプロジェクトが形になるまでに援助いただいた数多くの皆さまに、あらためて、お礼を申し上げます。

スウェン博江
2023年4月

 

HIROE SWEN BIO

スウェン博江略歴

略歴

1934         京都に生まれる。

1949-52   京都の堀川高校で、岩田順三に西洋油彩画を学び、美術にめざめる。

1953         染色(臈纈染)の研究をはじめ、染色デザイナーとして成功する。

1957-61   京都市工芸指導所で陶芸を学びはじめ、のちに京都の陶芸家、林平八郎の工房で 3年間学ぶ。

1957         京都で、坪井明日香ら6名の女性陶芸家とともに「女流陶芸」を設立。

1962         京都に自分の工房を構え、「女流総合美術展」(朝日新聞主催・大阪そごう)に毎年出品する。

1966         オーストラリア人アーティスト/デザイナーのコーネル・スウェンと京都にて結婚。

1968         シドニーにコーネルとともに移住。

1973         パストラル・ギャラリーをオープン(2003年まで、コーネルとともにギャラリーを運営)。

 

主な個展

1968    豪州での初の個展。(a)クラフト・センター・ギャラリー(メルボルン)および (b) ストロベリー・ヒル・ ギャラリー(シドニー)のオープニング展で、日本で制作した作品を展示した。

1970    スウェン夫妻はキャンベラ近郊の田舎に移り住み、33年間にわたりそこで暮らす。自分たちの画廊を建て、パストラル・ギャラリーと命名。

1972    3度目の個展をキャンベラの日本大使館にて開催。渡豪後、キャンベラ工業大学(当時)で非常勤講師をしながら制作した作品を展示した。

1973    パストラル・ギャラリーの開館以降、17年間にわたり、博江の主要な展覧会のうち10回は同ギャラリーで開催された。

 

最近の個展

2000     「スウェン博江回顧展――1965-2000年」於クラフトACTギャラリー(キャンベラ)。

2008      「闇から光へ」展、於ドリル・ホール・ギャラリー(キャンベラ)。

2013       「日豪のハーモニー」展、於ベルコンネン・アーツ・センター(キャンベラ)。

2018    「50の幻想的な鳥たちの飛翔のかたち(フィフティ・フライツ・オブ・ファンシー)」展、於ワトソン・アーツ・センター・ギャラリー(キャンベラ)。在豪50周年記念展覧会。

2020    「スウェン博江――陶芸一筋に生きて」展、於スタート・ギャラリー(ミタゴン)。

 

その他の会場

1981        デイヴィッド・ジョーンズ・アート・ギャラリー(シドニー)

1983        ギャラリー安里(名古屋)

1995      日本庭園センター (ニュー・サウス・ウェールズ州カウラ)

2007      ギャラリー・イースト(西オーストラリア州フリーマントル)

 

グループ展

オーストラリア、ニュージーランドなど、国内外で数多くのグループ展に参加。

 

収蔵コレクション

オーストラリア国立美術館は50点近い作品を収蔵しており、作品数としては最大のコレクションのひとつ。オーストラリア州立・地方美術館、オーストラリア国内外の豪政府機関など、博江の作品を収蔵する機関は合計20にのぼる。

 

個人コレクション

オーストラリア、日本、ニュージーランド、合衆国、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、メキシコ

 

教歴

1971-73          キャンベラ工業大学で非常勤講師として陶芸を教える。

1981-2000      キャンベラ美術学校で専任講師として陶芸を教える。

 

1970-80年代   豪各地にてワークショップを実施。

1974-84         「ビンビンビー陶芸研究会」を組織。自身の工房で女性陶芸家たちを指導。

日本では京都精華大学などでワークショップや講演をしている。

 

主な出版物

1969     ABC制作テレビ・ドキュメンタリー映画『シドニーを拠点に活動する日本の女性陶芸家』

1972          ドキュメンタリー映画『スウェン博江の陶芸』

フェイ・ボットレル著書『オーストラリアの美術・工芸アーティスト』

1974           CTC制作テレビ・ドキュメンタリー『ア・クローサー・ルック』

1976          カタログ『国際陶芸展』ファエンザ出版(イタリアにて刊行)

南オーストラリア・フィルム・コーポレーション制作のドキュメンタリー

『マリア・ガザード、スウェン博江、ピーター・トラヴィスの 手びねり技法』

1982       ピーター・レインの著書『スタジオ陶芸家』(英国にて刊行)

1984        『現代陶芸の巨匠たち』ファエンザ出版

アラン・ムールト著書『オーストラリアの工芸』

ピーター・レイン著書『陶芸のフォルムの探究』(英国にて刊行)

1988          ピーター・レイン著書『陶芸の造形デザインと装飾』(英国にて刊行)

1992          グレース・コクラン著書『オーストラリアにおける工芸革新運動――その歴史』

2000          サリー・ミルナー著書『マスター・ワークス』

 

コミッション・ワーク

クィンビアンの姉妹都市記念碑のための6枚の円盤状の装飾。

立法議会建物の壁面装飾デザイン(夫のコーネル・スウェンとの共同制作)。

オーストラリア大使館(東京)のための作品(1990年)。

 

受賞歴

2000 「キャンベラ・アーティスト・オブ・ザ・イヤー」受賞。

オーストラリア国立大学芸術学部で18年間陶芸を教えたあと、5年間の客員研究員資格を得る。

2006  産経新聞社主催の介護経験についてのエッセイ・コンテストで三位に入賞。

2016     旭日双光章を受章。日本(出身)の女性陶芸家の先駆者としての功績、異なる文化間の境界を超えて活躍する陶芸家としての功績、オーストラリアでの陶芸教育における教育者としての貢献が評価された。

2023  陶芸教育者、及び、アーティストとしてのオーストラリアの陶芸芸術への多大な功績により、オーストラリア勲章を授与された。

 

インタビュービデオ

オーストラリア 陶芸家 スウェン博江が語る 自分にとっての陶芸 陶芸に込める思い

このインタビュービデオは オーストラリアの著名な陶芸家スウェン博江が自らの陶芸について語る言葉を記録したものです。このインタビューは、スウェン博江の陶芸世界を後世の陶芸家たち、また、陶芸を研究する人たち、陶芸を愛好する人たちと共有するために作られたデジタルアーカイブの一部として、作られました。

インタビュービデオ 日本語

クレジット:

アーティスト、話し手:スウェン博江
聞き手:篠崎まゆみ
撮影:ローレンス・テイラー、マイケル
字幕:味岡千晶
字幕校正:ヤング、エディー
編集:マックギーキー、ブレントン

フォトアルバム